ハイブリッド・カーは複数の動力源(普通はガソリンエンジンと電気モーター)を持ち、それらを状況に応じて使い分けたり併用して走行する自動車です。ハイブリッド・カーは日本が世界をリードしていて、トヨタの最も有名なプリウスは35.5km/lの燃費を記録したことがあります。
通常、ハイブリッド・カーはガソリンエンジンと補助動力源としてバッテリー、モーター、を搭載しています。個人にとっては燃費の良さとそれによる低公害性が利点になります。平坦な道路など低負荷時や低速運転時にはエンジンを停止し、電気モーターだけで走行します。坂道など高負荷運転時にも電気モーターで補助することで、ガソリンエンジンを本来より低出力に抑えることでガソリン消費量と二酸化炭素排出量を抑えます。社会全体では低公害に加え、ガソリンエンジンを使用するため、新たな燃料補給基地などを整備する必要がないのが利点となります。
ハイブリッドシステムには3つの方式があります。まずマイクロハイブリッドはハイブリッドの中では最も簡素なシステムです。その機能は自動アイドリングストップです。まず自動車が停止しようと減速したときに下記の回生ブレーキで充電し、停止中はガソリンエンジンを止めます。そして自動車が再始動するときに電気モーターで補助し、スムーズに加速できるようにします。停止状態から時速10kmに加速する間は最高に燃費が悪くなると言われています。それを電気で解消するのです。ただそれだけですので、燃費向上は10%前後です。また、目的地まで止まらずに行ける環境では効果を発揮できません。それでも、交差点や信号の多い都市部では有効ですし、ドイツのBMWから19%燃費が向上した車(120i)も発表されています。
マイルドハイブリッド(トヨタ語らしい)はマイクロハイブリッドとほぼ同じですが、アイドリングストップ中でもエアコンを駆動することができます。もちろん電気による駆動ですので、ガソリンは消費しません。普通車ではエアコンを駆動すると燃費が悪くなります。マイルドハイブリッドではそれがなくなることで、燃費が35%向上するようです。
フルハイブリッドは複数の動力機構と貯蔵機構を持ち、それら複数の動力機構が走行状態に応じて自在に力を発揮します。燃費向上は60%以上も狙えるようです。
さらにフルハイブリッドには3つの方式があります。まずシリーズ方式はガソリンエンジンをバッテリーの充電のみに使用します。そしてその電力でモーターを作動させ走行します。言わば、ガソリンで動く電気自動車です。ただこの方式はガソリンの燃焼エネルギーを一度電気に変換してから使用するため、効率が悪いです。またモーターが大型になる上、航続距離が短いため、普通乗用車にはあまり採用せれていません。それでもエンジンや発電機を高性能化するなどしてゼネラルモーターズ、クライスラー、三菱自動車の小型車やトヨタ・コースターEV、その他、大型バスにも使われています。
パラレル方式では電気モーターを補助動力とし、ガソリンエンジンをバッテリーの充電と走行の両方に利用します。また下記の回生ブレーキを装備しています。日産のマーチなどがパラレル方式です。
スプリット方式(シリーズ・パラレル方式)はパラレル方式にバッテリー充電専用の発電機を追加したものです。スプリット方式はエンジンの
動力を太陽歯車という機構で分割し、同時に発電機と車輪駆動を行います。パラレル方式よりエネルギー効率が高く、トヨタのプリウスもこの方式です。現在のハイブリッド・カーの主流はこのスプリット方式となっています。
ハイブリッド・カーの装備の一つに回生ブレーキがあります。これは動いている自動車などの運動エネルギーを電気エネルギーに変換・回収して減速させるブレーキシステムです。回収した電力は鉄道では送電線に返して正味消費電力を削減、エレベータでは停電時の非常電源、ハイブリッド・カーでは電気モーターを回し、走行の補助に使います。ハイブリッド・カーの中ではトヨタのプリウスに搭載されています。
プラグインハイブリッドは家庭のコンセントでバッテリーを充電できるシステムです。これはまだ試作段階の技術です。しかし実用化されれば様々なことができるようになります。夜に安い夜間電力で充電しておけます。またバッテリーなどの性能が向上すればガソリンを一切燃やさず、その電力だけで走行できるようになるかもしれません。また安い夜間電力や回生ブレーキで充電した電力を電力会社に売れるようになるかもしれません。そうなれば、自動車が発電所となり、化石燃料による発電を抑制したり、電力不足対策にもなります。さらにハイブリッド・カーの持ち主は夜間電力で充電して、昼間に売却することで利益を得られる可能性があります。ここまでくれば、もはやハイブリッド・カーは単なる乗り物ではなくなることでしょう。
ハイブリッド・カーの2015年のシェア予想は日本で5%、米国で 4%、西ヨーロッパで2%に過ぎません。普及の障害の一つに自動車の本体価格が高いことが上げられます。いくら燃費が良いといっても、普通車との価格差を燃料費の差で埋めるにはかなりの距離を走行する必要があります。(ガソリンが1リットル150円、ハイブリッド・カーの燃費が25km/l、普通車の燃費が10km/l、ハイブリッド・カーの価格が普通車より30万円高い場合で約3万3333kmとなります。→計算法)なので、ハイブリッド・カー購入の際には燃料費で価格差を埋められるかだけでなく、運転のし心地、ガソリンスタンドに行く時間が節約できる、内装や外見、など様々な要素に目を向け、価格相応の価値を見出したうえで決断しましょう。
高くて敬遠されるなら、レンタルできるようにすればいいと考えることもできます。アメリカのレンタカー会社ではエイビス・レンタカーが現時点で1000台以上、ハーツ・レンタカーが2008年までに3400台のプリウス配備を計画しています。またエイビス・レンタカーはロンドンにもプリウスを配備しています。またイギリスのナショナル・カー・レンタルは渋滞課金が免除されることから法人向けにプリウスを配備しています。
価格以外の問題点としては走行環境次第ではハイブリッド・システムを生かせないということです。ハイブリッド・カーは発進と停止を繰り返す都市部や程々の上り坂で真価を発揮します。なので、北海道の郊外など出発点から目的地まで平坦な道を止まらずに走っていける場合はあまり意味がありません。また長い上り坂や下り坂もです。上り坂の途中でバッテリーの電力を使い切った場合、それ以降ハイブリッド・システムは荷物でしかありません。また電気モーターで補助する必要がない下り坂も同じです。一応、減速時には回生ブレーキでバッテリーが充電されます。しかし限界まで充電されれば
、以降ハイブリッド・システムはやることが無くなります。ハイブリッド・カー購入の際には主にどういう所を走行することになるかも考えておくべきでしょう。