ITERは実験のみを目的とした核融合炉であり、直径約30メートル、重量2万3000tという巨大さです。ITERのアイディア自体は意外と古く、1985年のレーガン・ゴルバチョフ会談で提案されました。3年後にはアメリカ、EU、日本、旧ソ連、が共同で計画が進められるようになりました。一時、アメリカが離脱しましたが、後になって復帰しました。またカナダ、韓国、中国なども参入しました。ただ、アメリカは離脱中に計画の主導的地位を失い、技術面では日本などが計画をリードするようになりました。プラズマ中の断熱層を発見し、建設費を約半額にする提案を行い、設計変更がなされたほどです。研究者育成や技術開発のために日本とフランスで誘致合戦が繰り広げられましたが、最終的にフランスのカダラッシュに建設されることになりました。100億ユーロとも言われる建設費の負担はEUが4/11、、中国、インド、ロシア、アメリカが1/11ずつで計約5/11、日本が2/11を負担する代わりにカダラッシュの研究者の2/11が日本人とすることになりました。本格的な建設はこれからとなっています。
大きさは、直径約30メートル、重量2万3000tという巨大さです。プラズマを浮遊させるコイルが18個設置させますが、それ1つでも300tあります。7.3万kWの電力で840立方m(濃度は空気の10万分の一)のプラズマを加熱し、50万kWの熱出力を持たせます。この時、プラズマには1500万アンペアの電流が流れます。ITERは実験炉ですが、タービンを接続すると17万kW/hの発電能力となります。
核融合を実用化するには、核融合を起こすために投入したエネルギーより大きな核融合エネルギーが生成されることが絶対条件となります。投入エネルギーの何倍の核融合エネルギーが生成されたかはQ値(エネルギー増倍率)という数値で表します。今までの装置では投入エネルギーと同程度の核融合エネルギーしか生成できませんでした。Q=1、ということです。これに対し、ITERでは、Q=10の状態を300秒以上、Q=5の状態を定常的に満たすことを目標にしています。
まず上記の目標を達成できるかという根本的な問題があります。もし失敗すれば100億ユーロが無駄になるうえ、フランスには成功・失敗にかかわらず、放射性廃棄物と化した核融合炉が残されます。またITERの実験が成功しても、そこからどう核融合炉を実用化商用利用する段階に持っていくかが不透明です。
ITERの規模では新開発する必要ありませんが、実用化のためには放射線や高エネルギーの中性子に長時間耐える材料が必要です。この開発は日本の青森県六ヶ所村で進行中ですが、こちらも成功する保障はありません。実用化するだけの技術が揃っても原発同様の問題が待っています。建設地の選定と住民の理解を得ることです。建設地の選定は自治体によるババ抜きと化すかもしれません。またいくら核融合炉が原子炉より安全でも理解されなければ意味はありません。なので、核融合発電はITER計画が成功して、やっとスタート地点に立ったといえるかもしれません。