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現在、地球温暖化によって海の水位が上昇しつつあります。原因は極地方で氷床などの氷が海に崩れ落ちている、及び気温上昇による海水の熱膨張です。陸上にあった物体が海に落ちるとその体積と同量の海水を押しのけるため、水位が上昇します。これは入浴時に体を湯船に入れると湯の水位が上がるのと同じことです。一方、現時点で海に落ちて浮いている氷山は融けても押しのけていた海水と同量の水になるだけですので、海面上昇には寄与しません。また、水やその他の物質は熱せられると体積が増加します。これが熱膨張です。当然、温暖化で熱を溜め込んだ海水も膨張します。この海水の膨張によっても海の水位は上昇していくのです。IPCC第4次報告書では1961年以降年間1.3~2.3mm(1993年から 2003年に限れば2.4~3.8mm)上昇し、そのうち0.3~0.54mmが海水の熱膨張によるものと見積もっています。
もうすでに海面は20世紀中に17cm上昇したといわれています。さらに2001年発表のIPCC第3次報告書には2100年までに9~88cm上昇すると書かれています。もし88cm上昇だと世界で沿岸地域から推定2憶6000万人が移住しなければならなくなります。2007年発表のIPCC第4次報告書では複数のシナリオに分けられていて、環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会なら2100年までに18~38cm、化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会では26~59cmの上昇と予測しています。ただしこの予想は甘い可能性が高いです。最後の氷河期が終わったころ気温は今より2、3℃高くなっていました。そして6000年前、海面は今より5m高くなりました。事実、海抜5m付近には多くの貝塚遺跡が存在しています。海面上昇の推移(1961~1990年の平均を0.0mmとしています。)
まず日本ですが、島国のため海面上昇の影響を直接受けます。毎年日本各地の砂浜には多くの人が海水浴に訪れています。この砂浜の56.6%がわずか30cmの海面上昇で消滅するという予測があります。50cm上昇すれば高潮や津波による氾濫危険地域は現在より約2割増の7583kmとなります。これにより286万人の人と77兆円分の資産が影響を受けます。1m上昇すれば現在の約2.7倍の2339平方kmの土地が海面より低くなり、410万人の人と最大で378兆円分の資産が影響を受けます。そしてこの人と資産を守るには堤防を2.8~3.5mかさ上げするなど約11兆円の対策費が必要となります。
海外でも様々な被害が発生します。インドとバングラデシュの国境のガンジス川の河口のスンダーバンズという所には世界遺産にも選ばれたマングローブの林があります。ここでは水位の上昇により農地が塩水に侵されたり、川に流される被害が出ています。ベンガルトラなどの希少動物の住む森にも影響が出るのではないかといわれています。住民も真水を得るために5km歩かなければならなくなるなど、影響は農業以外にも広がっています。
ヨーロッパでは水の都と呼ばれているベニスが将来的には水中の都になる可能性があります。
ベニスは干潮時に出現する干潟に木の杭を打ち込んで土台を作り、その上に石を敷き詰めたさらに上に築かれた都市です。最近、この木の杭が侵食され、ベニス全体が沈みつつあります。住居の1階部分はほぼ使用不能になり、住民は内陸へ逃げています。特に最近は船の波による侵食と地下水の汲み上げで水没が加速していて、2000年後には4~5階建ての建造物すら水没する可能性があります。ただ、石を積み上げるなど常に補修されていますので、今世紀中は現状維持ということになりそうです。
北極圏にある人口600人のシシュマレフという島には波による侵食で2軒の民家が海へ崩れ落ち、18軒が内陸へ移っています。以前はこの島は氷によって高波から守られていました。しかし凍結期間が短くなり氷の波消し機能は低下、海岸線の侵食は年3mに達しています。このままでは10~12年後には島全域が移住不能になる可能性があり、全人口がアラスカに移住することになりました。ただし、240億円ともいわれる移住費用が用意できるかは不明です。
一方、南太平洋のツバルは国全体が水没しつつあります。面積は世界第192位の26平方km、人口は下から2番目の1万500人、島の最も高い地点でも海抜4~5mほど。付近の海の水位は12年で10cm上昇し、満潮時には道路や町、農地に海水が溢れ出すようになっています。2004年2月には空港も冠水しました。また、井戸水も塩分が増加し、飲料水の確保が難しくなっています。さらにあと50年ほどで国が消滅するのではないかといわれています。このため住人はすでに4000人以上がニュージーランドに移住。京都議定書に参加しなかったため、アメリカとともに国際司法裁判所に訴えようとしていたオーストラリアにも毎年75人が移住しています。温暖化の主な原因は先進国にあります。それでもツバルは自らやしの実を用いたバイオディーゼルや太陽光による街灯、風力発電、堆肥化トイレ、などの環境保護プロジェクトを計画しています。
正のフィードバックとは加速度的に何らかの反応や作用が進むことです。簡単に言えばあることが起きれば起きるほど、さらにあることが進行するとも言えます。海面上昇に適応すると海面が上昇するほど、さらに海面が上昇しやすくなるということです。
まず温暖化で海面が上昇すると今までより高い地点まで水に浸ります。よって水が極地の沿岸で氷を飲み込みやすくなります。すると融けなくても引き込んだ氷の体積に比例して海面が上昇します。また永久凍土のヒビに海水が入り、氷と地下の岩盤との境界に達すると氷が海へ滑り落ちやすくなります。染み入った海水が潤滑油のように働くからです。
逆の負のフィードバックというのもあります。これは、あることが起きれば起きるほど、あることの進行にブレーキがかかるということです。温暖化で氷が融けると海水の蒸発が活発化し、海面の上昇を抑えます。この蒸気がすぐ海に戻ってきたら、意味はありません。しかし蒸発した水は雪として降り積もり、陸に蓄えられます。なので、一時しのぎとも言えますが、この負のフィードバックは海面上昇を抑える効果があります。