マラリアは熱帯性の病気で、単細胞生物であるマラリア原虫が体内に侵入することで発病します。温暖化で気温が上昇すればマラリアの感染危険エリアが熱帯から北上し、日本も南からその中に入ることになります。
マラリア原虫はハマダラカという蚊の体内で増殖します。マラリア原虫は蚊の唾液腺に集まるので、ハマダラカに刺されると吸血時に大量のマラリア原虫が体内に流入します。その数は1回で5万匹ともいわれています。その後、高熱に襲われますが、すぐ治ります。しかしそれで油断していると3日熱マラリアなら48時間後、4日熱マラリアなら72時間後にまた高熱に襲われます。このようなことを繰り返し、どんどん重症化していきます。この周期性(周期性が薄いタイプもあり)の原因はマラリア原虫が、赤血球の中で増殖(1週間で4万倍とも)→赤血球を埋め尽くすと破裂させて脱出→また赤血球に侵入し増殖、というプロセスを繰り返すためです。赤血球内で、増殖するため免疫も有効に機能しません。だいたい3度目の発熱時にはかなり重篤な状態になっています。そのうち、体内は無数のマラリア原虫に埋め尽くされます。そうなると赤血球不足で酸欠を起こし、昏睡状態になったりします。さらにマラリア原虫に侵された赤血球が脳の毛細血管を詰まらせ、死に至ります。(脳マラリア)その上、肝細胞内で一部のマラリア原虫が休眠状態になり、長期間体内に居座る場合もあります。それらが、何らかの要因で活動再開することで完治したと思ったマラリアが再発します。死者は世界で年間200万人といわれています。
現在、マラリアのワクチンはりません。抗マラリア剤というものはありますが、副作用があります。なので、蚊帳や防虫グッズで、ハマダラカに刺されないようにするしかありません。温暖化の被害では異常気象関係のモノがよく取り上げられますが、その影ではこのような危険が迫っているのです。
他に温暖化で拡大しそうな病気にはデング熱と西ナイル熱があります。
デング熱はヒトスジシマカやネッタイシマカに刺されることで感染します。感染すると発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛に襲われます。さらに手足や顔に発疹が出てかゆくなります。その後、1週間程度で治ります。治療法はアスピリンという鎮痛剤の投与などです。また子供はデング熱と同じような原因でデング出血熱にかかる場合があります。こちらはかかると血小板が減少したり出血します。その後、出血多量で重篤なショック状態になることもあります。
西ナイル熱はウエストナイルウイルスに感染して発症します。このウイルスは鳥の体内にいて、その鳥を刺したイエカやヤブカに人間が刺されると感染します。ただ感染しても5人に1人しか発症しません。発症すると発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛、に襲われます。さらに発症者の3〜3.5%はウエストナイル脳炎を起こし、呼吸不全などで死に至る場合もあります。2005年には西ナイル熱で、アメリカで119人が死亡しています。イエカやヤブカが感染源になるので、ウエストナイルウイルスが日本に侵入してきたら都会内部でもウイルスが拡散することになります。
上記のうち、マラリアとデング熱は温暖化で蚊の生息可能地域が北に広がることで、日本国内でも感染者が発生するようになります。特に南にある沖縄が危険です。IPCCの予測では気温が3〜5℃上昇すれば温帯地方で蚊が10倍以上になり、患者数が年間5000〜8000万人増加するとしています。また2100年には沖縄どころか西日本一帯が感染危険地域になります。