これは外界から隔離された場所に作物の種子を保存し、未来に残すプロジェクトで、正式にはナショナルバイオリソースプロジェクトといいます。伝染病や自然災害からの保護を目的としていますが、地球温暖化からの保護もできますので取り上げてみました。
種子を保存する施設(スバルバル・グローバル種子保管庫)の建設地は北極圏のノルウェー領スバルバル諸島で、ノルウェー本土の500km北にあり、自然災害が少なく、気温が低いために選ばれました。ここの永久凍土中に長さ120mのトンネルを掘って施設を建造、世界中の作物の種子を保存する計画です。保存する種子は全世界から募集することになっています。
国連食糧農業機関や日本政府が最大の出資者である研究機関の国際農業研究協議設立のグローバル作物多様性トラストが建設にあたり、トラストの本部があるノルウェー政府、米国、インド、カナダなど約15カ国の政府と3つの企業などが計4700万ドルを出資し、早ければ2008年2月26日に最初の種子搬入が行われました。その種子の量は米、小麦、ジャガイモレタス、ナス、など計26万8000種で、10tにもなります。
トンネルの保護能力についてはトラストのケイリー・フォウラー博士曰く、永久凍土の地下は零下四度から同六度と安定しており、外部の気温が温暖化で高くなってもほとんど変わらないそうです。さらに温度維持システム付きです。またトンネルの入り口は海面から130m上の地点になるので、大幅な海面上昇があっても大丈夫、とのことです。トラストも1万年は保存可能と自信を持っています。
しかし、地球温暖化からの保護という視点からみれば、これは現状にどこかあきらめているような手段です。世界が地球温暖化対策に取り組み、この施設建設が無意味だったと思えるようにして欲しいものです。