海洋温度差発電(OTEC)は1881年にフランスの物理学者が考案し、海の表層水(25〜30℃)と深層水(5〜10℃)の温度差を利用して発電します。これは海洋に蓄えられた膨大な熱エネルギーを利用するということです。この熱エネルギーは尽きることがない上、二酸化炭素の排出ゼロで利用できます。また、風力や太陽光と違い安定していますので、発電量も安定します。赤道を中心とした南北40℃以内の発電可能電力は1兆kw(世界の発電能力の300倍以上)ともいわれ、建設可能国は98カ国です。コストも安く、30万kW級なら、1kWあたり、6円から8円になるようです。
海洋温度差発電には循環系統が隔離されているかによって、クローズドサイクル、オープンサイクル、という方式があります。もちろん、両方二酸化炭素の排出ゼロです。
クローズドサイクルは下記の佐賀大学の装置のようにアンモニアなどの気化させやすい媒体を循環させて発電します。媒体が閉じた装置を循環し続けるので、クローズドサイクルと呼ばれています。
オープンサイクルは熱帯の温水を利用します。まず装置の低圧沸騰器(気圧が下がると沸点も下がる)に温水を引き込み、気化させます。そして発生した水蒸気でタービンを回し、発電します。この装置では低圧沸騰器に塩分が取り残されるので、電力と同時に真水を作ることが出来ます。この方式は装置を密閉せず、使用する媒体を外部から引き込み続けるので、オープンサイクルと呼ばれています。
また、何を循環させるかによっても分かれます。純粋なアンモニアを循環させるとランキンサイクル、アンモニアに水を混ぜた媒体だとカリーナサイクルと呼ばれます。
各方式の発電プロセス
現在の日本では佐賀大学の海洋エネルギー研究所ではウエハラサイクルという方式の実験が進んでいます。ここの30kw級実験プラントでは液化アンモニアと水を9:1で混合したものをを表層水で気化し、気体になったアンモニアでタービンを回して、発電します。その後、気体のアンモニアはポンプで汲み上げた深層水で液化して再利用します。この発電プロセスのどの部分でも二酸化炭素は排出されません。この装置の課題は発電量の少なさです。現段階では電力の大部分が深層水の汲み上げで自家消費され、正味発電量は3〜4kwです。商用利用するには装置の発電効率と発電量を高める必要があります。
また沖縄県産業政策課では予算5億円で100kw級の実験プラントの建造を計画しています。
海外では佐賀大学主導でインドにサガ・シャクティという海に浮かんだ船型の実験プラントが設置されました。出力は1000kWです。今後、インドでは5万kW級プラントを1000基設置するなんて計画もあります。パラオでは3000kW級設置の予定があります。