地球の平均気温は1800年代後半から現在までに0.74℃(幅をもたせると0.4〜0.8)上昇していて、その内0.5℃の上昇が1950年以降に起きたというデータがあります。これは1800年代後半から現在までに増加した温室効果ガスの内70%が1950年以降に排出されたことによるとみられます。気温上昇から逃げるため、植物は山の標高の高い場所に移ったり、ここ10年で年600mのペースで両極方向に移動しているというデータがあります。植物が種子を飛ばして生息域を広げるのは1年につき1kmほどです。気温上昇がこれでは対応できない速度になれば絶滅するしかありません。また、現時点で地理的に移動する余地が無かったり、生息域を広げる力が乏しい植物は少しの温度上昇で絶滅する可能性があります。植物が絶滅すればその植物を食べる草食動物、その動物を食べる肉食動物も絶滅します。動植物が適応できる気温上昇は10年につき0.05℃といわれています。果たして、いつまで耐えられるのか…
気温上昇によってここ10年、日本では桜の開花が全国平均で50年で4.4日、都市部では6.3日早くなっています。一方、カエデの紅葉は全国平均で50年で5日遅くなっている上、都市部では秋の冷え込みが足りず、鮮やかさも落ちつつあります。
北極圏でも植物の生育が数日ずつ早くなっています。2005年、デンマークのコペンハーゲン大学などがグリーンランドの植物6種、鳥類3種、節足動物12種を調査し、1996年のデータと比較しました。すると植物の開花は全種早くなっていて、差が最小の種で3日、最大の種では21日も早まっていました。春に現れる節足動物は12種中10種で早まっていて、最も差が大きい種は1ヶ月近く早く現れるようになっていました。そして、21種の平均は14.5日でした。これは10年で4.3℃という温度上昇の結果とみられます。
また、日本の農業も影響を受けます。もし気温が3℃上がれば愛媛でサトウキビ、長野や青森でミカン、北海道ではリンゴが広く生産されるようになるかもしれません。米は北海道で収穫量が13%増加し、それ以外の地域では8〜15%の減産となる可能性があります。
海の中でも異変が起きています。以下にあるように沖縄のサンゴは白化が進んでいます。その一方で、サンゴは温暖化から逃げるように九州や高知沿岸に移りつつあります。現地ではコンブの森だった場所がサンゴに覆われ、アワビの収量が減少するなどの影響が出ています。さらに2007年、北海道ではクロマグロの水揚げが900頭から4500頭に増加したり、ほとんど獲れなかったトラフグが獲れるようになっています。
サンゴの中には渇虫藻という植物プランクトンが住んでいます。サンゴはこの渇虫藻が光合成でつくった養分をもらって生きています。しかし海水温が30℃を超え、住み心地が悪くなると渇虫藻はサンゴから出ていってしまいます。するとサンゴは白くなります。これがサンゴの白化です。それはそれできれいですが、約1ヶ月間そのままだとサンゴは栄養不足で死んでしまいます。ここ最近、温暖化により世界中でサンゴの白化が起きています。1998年には海水温が異常上昇し、世界規模で白化が発生、世界のサンゴの16%が死滅しました。2007年には石垣島近海でそれまで白化が確認されなかったアオサンゴが白化。通常は石垣島近海で30℃を超えることはあまりありませが、このときの海水温は30℃を超えていました。台風があまり接近せず、海水がかき混ぜられなかったためとみられます。
世界規模ではここ20年ほどでサンゴの白化は加速しながら進んでいます。ノースカロライナ大学が太平洋、インド洋、オーストラリアのグレートバリアリーフなど世界のサンゴ礁の75%が含まれる海域について調査しました。調査したデータは2667箇所分で延べ6000以上になります。その結果、サンゴは平均年3000平方kmで減少していました。これは熱帯雨林以上の減少率です。その率は平均1%ですが、2000年代に限れば2%になります。また、減少率は保護区でも同水準で、保護対策が効いていないことを示唆しています。
サンゴに襲い掛かる危機は白化だけではありません。白化したかのようにサンゴが白くなるホワイトシンドロームという病気(白化とは違う)、海に溶けた二酸化炭素によって海が酸性化してサンゴの体(炭酸カルシウム)が溶ける、といった危険があります。その上、東南アジアではサンゴ礁に青酸化合物をまいて、魚をマヒさせて獲るという漁法が行われています。魚は2時間ほどで回復するらしいですが、サンゴは青酸化合物に非常に弱く、そうはいきません。さらにその上をいく漁法も行われています。それはサンゴ礁で火薬入りのペットボトルやビール瓶を爆発させるというものです。その衝撃で魚の浮き袋が膨らみ浮き上がらせて獲るわけですが、サンゴは衝撃にも弱く、一発で半径10m以内のサンゴが死滅します。このようなことにより、天然サンゴはあと50年で絶滅するという予測もあります。これを裏付けるかのように2007年9月12日発表のレッドリストでサンゴは絶滅危惧種に指定されました。沖縄在住者などサンゴ礁が身近な存在の方は、今のうちによーく見ておくべきかもしれません。
南極海では南極オキアミの減少が懸念されています。原因は人間の乱獲と天敵から隠れられる氷の減少です。オキアミは鯨やアザラシなど、多くの生物のエサとなる重要な存在です。その減少は南極海の生態系に多大な悪影響を与える可能性があります。