前置き−普通に生産されている天然ガスを在来型、それ以外の生産困難なものを非在来型といいます。シェールガスはこの非在来型です。天然ガスのガス田はシェールガスの一部が長い時間をかけて地表近くに移動し、貯まることで形成されます。つまり天然ガスとの違いは場所だけで、全く新しい物質というわけではありません。よって既存の天然ガスと同感覚で使用できます。
シェールガスのシェールとは頁岩(シェール)層のことです。このシェール層は水分を失った海底などの泥が固まって形成された泥岩で構成されています。ここにシェールガスは広く広がって貯まっています。アメリカのエネルギー省の推計では採集可能なシェールガスは世界に187兆立方メートルと世界の天然ガス生産量623年分となっています。
なぜ、今までシェールガスが話題にならなかったとかというと、天然ガスは砂が固まった浸透性が高い砂岩の隙間に貯まっているのに対し、泥岩にはガスが通れるような隙間がありません。さらに圧力が低いため、天然ガスのように堀り当てれば勝手に噴き出すということもありません。そもそもシェール層自体、2000m〜3000mと地下深くにあることが多いです。(天然ガスは1000m以内でもかなり採れる)よって天然ガスほど簡単に生産することはできません。1970年代にアメリカで自然に割れ目が出来ていたシェール層で採集されていたものの長い間、日の目を見ることはありませんでした。
最近になってシェールガスの生産が本格化したのは新しい生産技術が誕生したからです。それは水圧破砕法(ハイドロフラッキング)です。
まずシェール層まで坑井(こうせい)、簡単に言うと竪穴を掘ります。次にシェール層内部に水平坑井(横穴)を掘ります。水平坑井も技術革新により、3000m掘ることもできます。穴が掘れたら数トンから10トンの水を押し込み、水圧でガスが通る割れ目を作ります。水には割れ目が出来やすいよう粘度を調整する化学薬品、割れ目を保護する粒の粗い砂などの支持材を混ぜておきます。後は割れ目から水平坑井に漏れ出したガスを坑井から回収します。しかし水圧破砕法には様々な問題が…
まず化学薬品が混合されているため、使用した水を適切に処理しなければ土壌や地下水が汚染されます。実際に水道水に変な色や臭いが確認されたことがあります。またガスが漏れ出し、水道の蛇口に火を近づけると燃え始めることがあります。注入された水のせいで断層が滑りやすくなったのかアメリカでは誘発地震が起きています。おかげで根強い反対運動が起きていて、オノ・ヨーコさんが生産反対ツアーを行なったことも。
よって、さらなる技術革新や政府の監視が必要と言えます。
天然ガスの熱量当たりの二酸化炭素排出量は化石燃料としては最も少ないので、シェールガスも石油や石炭よりはクリーンと言えます。しかしシェールガスはヨーロッパ、中国、カナダ、オーストラリアなど多くの国が調査を行なっていますが、大量生産しているのはアメリカのみです。よって日本で利用するなら、当面はアメリカから輸入することになります。ここで問題になるのが、FTA(自由貿易協定)です。アメリカはシェールガスの輸出はFTA締結国を優先していて、それ以外の国への輸出は案件ごとに許可が必要となっています。日本は今どころ許可されていますが、安定輸入のためには早急にアメリカ以外の国からの輸入ルートを開拓しなければなりません。
日本は原発停止の影響で液化天然ガスを年間3兆円余分に輸入していると言われていますが、世界一高い単価で買っています。他に頼れる資源がなく、中東に対する価格交渉力が無いためです。シェールガスを安定輸入できるようになれば、通常の液化天然ガスも値引きできる可能性があります。