このソーラータワー建造計画を進めているのはオーストラリアのエンバイロミッション社です。またオーストラリア政府もこの計画を主要促進プロジェクトに認定しました。タワーの高さはなんと1000m。その仕組みは、直径7kmの温室のような構造の太陽光集光装置で内部の空気と太陽電池を加熱します。65℃まで加熱した空気は中心部へ流れていき、約時速56kmまで加速し、空洞になっているタワー内部を上昇していきます。暖められた空気は上昇するという性質があるからです。そして空気は上昇中に32基の風力タービンを回し、電力を生み出します。ソーラータワーの発電能力は太陽光集光装置の面積が広いほど、またタワー部分が高くなるほど増加します。さらに集光装置である温室が広ければ、中に化石燃料や地熱による発電装置を入れ、その排熱でソーラータワーの発電能力を増強するということも可能かもしれません。
もちろん最大の利点は動力が太陽熱であり、温室効果ガスを排出しないことです。そうして200メガワットの電力を生み出せば、タワー1基で推定年間83万tの二酸化炭素を削減できます。また風力タービンで発電するといっても、太陽熱で風を起こすので、自然の風の強弱は関係ありません。太陽熱で太陽電池は種類によっては60℃から80℃にまで熱くなります。この熱を利用することで夜間も発電でき、24時間稼動できます。さらに気温が高くなるほどタワーの発電量は高くなります。つまり気温上昇で空調の電力消費量が高まるのに合わせてタワーの発電量も高くなるということです。さらにソーラータワーは観光資源になる可能性もあります。
一方、最大の問題点は建造費です。タワー1基円換算で推定570億円から855億円といわれています。日本の原子力発電所建造費が1基3000億円だったことを考えれば、高くないように思えます。しかし1キロワット当りの建造費は原発約27万円〜31万円、火力発電所(石油)19万円に対し、ソーラータワーは28.5万円から42.75万円と割高です。しかし水力の60万円よりは安いです。また建造費削減の研究も進んでいます。ちなみにソーラータワーは太陽光集光装置の面積が広いほど出力は高くなります。逆に言うと、太陽光集光装置の面積が広くなければ、話しになりません。つまり、必然的に広大な用地が必要ということです。よって現在、日本ではソーラータワー建造は断念されています。
まず建造予定地としてオーストラリア内陸部にある約100平方kmの羊牧場が約100万ドルで買収されました。また中国にもタワー数基を建造する計画があり、中国の企業と合弁契約が結ばれました。実際の建造は契約相手の中国企業が行うことになっているようです。
オーストラリア政府がタワー建造を後押ししているのは、石油価格高騰や将来の枯渇を危惧しているためです。また2007年末に政権を奪取したラッド首相が京都議定書批准を表明しているので、今後は二酸化炭素削減対策としても重視されるようになるでしょう。
ちなみにソーラータワー建造計画はこれが初めてではありません。スペインのマンサナレスにはドイツの企業が建造した高さ195m、集光面積4万平方m以上、出力50キロワットのタワーがあり、実際に1981〜1989年に稼動していました。
そのスペインでは2011年から世界初となる商業用ソーラータワーが稼動。名前はヘマソラールで、太陽の宝石という意味です。仕組みですが、太陽の移動に合わせ、20秒ごとに向きを変える自動追尾装置付きの反射板2669枚の中心に高さ140mのタワーがあります。内部では硝酸ナトリウムなどの溶融塩が循環していて、太陽熱で565度以上に加熱されています。この溶融塩で542度の水蒸気を作り、タービンを回して発電します。さらに溶融塩を保温しつつ、タンクに貯蔵することで、太陽が出ていなくても15時間までなら発電できます。建設費は2億ユーロでした。
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