波力発電が海の表面の波を利用するのに対し、潮力発電は潮の満ち干きや海流を利用して発電します。潮の満ち干きを利用する場合は、まず干満の差の大きい河口を探します。見つかったら、川を横断させるように巨大な堰(せき)を建設します。すると、川の流れや潮位が変化するときに生じる海水の流れがタービンを回し、発電が行われます。また潮位変化が激しい湾内に堰を建設。満潮時に海水を取り込み、堰を閉鎖。干潮時に堰を開放して海水を落としてタービンを回す、というシステムも考えられます。これだと発電するタイミングをある程度選べますので、電力需要のピークに対応するように発電することもできます。
海流を利用する場合は速い海流が通っている場所を探します。特に速度4〜5ノットの海流が最適といわれています。次に水中タービン(海中風車)を沈めます。すると風が風車を回すように潮流が海中風車を回し、発電が行われます。また修理時には海面上に引き上げられる設備も考えられます。
無尽蔵の力を利用でき、外部から燃料を輸送してくる必要はありません。もちろん二酸化炭素の排出はありません。また潮の満ち干きや潮流は場所によって決まっているので、発電量が予測しやすいです。
デメリットは常時、水流や塩分、嵐や波にさらされるため、設備の機能維持が長期間できるかという問題があることです。修理するにしてもコストが高いと商用利用が困難になります。また堰による発電は水の交換を邪魔するため、生態系に悪影響を与える可能性があります。
まずフランスにランス潮力発電所という堰方式の潮力発電所があります。ここは1966年11月26日に完成した世界初にして世界最高出力の潮力発電所です。具体的な場所はフランスのサン・マロ郊外のランス川河口で、ランス川を2基のダムで完全に堰き止め、1963年7月20日に建設が始まりました。そのダムは全長750mもあります。平均で8m、最大で13.5mという大きな潮位変化により、24基のタービンが最大240Mwの電力を生み出します。しかも現在、建設コストは回収済みでしかも1kw当たりの発電コストは原発以下となっています。またノルウェーにはクバルスン潮力発電所という水中タービン方式の潮力発電所があります。潮流の速度が3.5ノットのクバルスン海峡に10mのプロペラを設置し、年間発電量は70万kwとなっています。
イギリスではマリン・カレント・タービン社がシーフラワーという潮力発電装置を開発。2003年にイングランドのデボン沖に300kwのシーフラワーを設置しました。海外にも広く設置し、2010年までに300Mwの設置を目指しています。他に実行されるか不明ですが、イギリスのセヴァーン河口に250億ドルをかけて全長16kmの堰を建設。860万kwの発電能力をもたせるという計画もあります。
またアメリカのバーダント・パワー社は2006年夏にニューヨーク市のイーストリバーに6基のタービンを設置しました。いずれ300基のタービンを設置し、発電能力を10Mwにする計画です。
一方、アジアでは韓国西海岸の江華島で最大出力812Mwの潮力発電所建設計画が進行中です。約2300億円をかけ、江華島と3つの島を全長7795mの堰で結びます。ここに水力発電機32基を設置し発電します。発電開始は2015年の予定で、もちろん、完成すればランス潮力発電所を遥かに超え、世界最高出力となります。本格的な建設は2008年から始まります。
ただそれまではニュージーランド、オークランド北西に建造される発電所が世界最高出力になりそうです。20011年に建造が認可されたばかりですが、出力は200Mwとなっています。
日本では潮位変化の大きな場所はありますが、大規模な堰を建設できる場所は少ないです。また付近住民の理解が得られる可能性が非常に低いです。一応、津軽海峡などで海中風車を回せないか研究されているようでが、潮力発電は日本ではあまりメジャーな存在になりそうにありません。
というわけで小型の発電装置が研究されています。兵庫の「ノヴァエネルギー」という定年退職した4人が設立したベンチャー企業ではまぐろ型の本体にプロペラを付けた船のスクリュー風の装置が研究されています。普通の潮力発電装置は同じ向きに固定されているのに対し、このまぐろ型装置は潮流に合わせて向きが自由に動き、常に発電効率が良いです。小型の実験機では1時間で一般家庭24時間分の電力を発電できました。また装置を固定する構造物を作る必要が無く、既存の橋の橋脚に付けることもできます。明石海峡大橋に取り付け、夜間のライトアップ用の電力を発電できないか検討しているようです。目標は黒潮での発電。直径16mのプロペラ4つを取り付けたブイ800基で原発より安く、原発1基より多くの電力(1600メガワット)を生み出せると試算されています。
一方、IHIと東大はさらに巨大な設備を計画。海底の重りから伸ばしたワイヤーで水深50mに直径40mのプロペラを浮遊させ、発電するというもの。出力は2000kW、コストは洋上風力より安い1kWh当たり20円、実用化は2020年の予定。