宇宙太陽光発電システム(SSPS)は静止軌道上の発電衛星で太陽光を受け、発電。その電力を何かに変換し、地上に送る発電法です。海外ではマイクロ波に変換し、地上の受信施設で受信するシステム、日本のJAXAでは赤外線レーザーに変換し、海上施設に照射。海水から水素を作り出し、燃料として利用する方式が研究されています。
宇宙で発電する利点としては、地上より多くの光を受けられることです。地上では夜があるうえ、太陽光は大気圏通過時に30%弱くなります。しかし曇りも空気もない静止軌道上では同じ面積で地上の10倍の光を受けられます。
そのため、衛星1つの年間発電量は原子炉1基並みです。問題点は衛星の製造・打ち上げ、受信施設の建設など発電設備の建設コストが高いことです。実用化するには2兆円以下の建設コストで、40年間使用でき、1kw当りの発電コストを8円程度に抑える必要があります。現在の技術で100万kWh級の衛星を打ち上げ、発電するとコストは1kw当り数百円になります。
さらに宇宙で発電された電力を地上へ送る技術が開発途上であり、いつ実用化できるレベルに達するかが不透明です。他に正確にレーザーを受信基地に送るため、地上からガイドレーザーを照射する技術や事故や障害に対応する技術も必要とみられます。このように実用化するには課題が多いですが、2023年には発電衛星が建設されるという予測があります。
マイクロ波方式では発電時に70%のエネルギーが失われるうえ、送信にも受信にも直径2kmのアンテナが必要です。現在、一番良い素材は何と宝石のサファイア(主成分は酸化アルミニウム)ですが、これで大規模な構造物は造れません。なので、日本のJAXAではYAG(ヤグ)というイットリウムとアルミニウムの複合酸化物やネオジムを含む物質、で生み出した赤外線レーザーで伝送します。予算は年間2億円、人員は170人ですが、これでもこの分野では世界最大規模です。実験例として2cm×3cm・厚さ3mmのセラミック板に赤外線レーザーと模擬太陽光を当て、照射したレーザーを増幅させることに成功。エネルギー変換効率は30%で、目標の40%が見えてきました。またJAXAでは過去にレーザーの公開実験を実施しています。そのときは、2枚の板の間に10KWのレーザーを通しました。2007年には太陽光励起(れいき)YAGセラミックレーザー発振装置で180KWのレーザーを作り出しています。また2007年にレーザー技術総合研究所は日光から180wのレーザー生成に成功しています。
JAXAの最終目標は100万kwのレーザーです。これには1枚にまとめて考えると厚さ13mmで200m×200mのYAGが必要と推定されています。あと、このような出力では雲に穴が開いたり、鳥や飛行機が影響を受ける可能性がありますが、エネルギー密度を下げれば大丈夫なようです。密度は1平方m当たり5kwで、生物には影響を与えないとみられています。JAXAでは2012年に実験衛星の打ち上げることにしています。これには東京大学、神戸大学、スウェーデン王立工科大学、イギリスのグラスゴー大学、イタリアのミラノ大学、オーストリアのウィーン大学、によるものです。計画では複数の衛星を打ち上げ、宇宙で500m程度の網を展開。数メートル四方のソーラーパネルを搭載したロボット数十機を網に乗せ、100kwの電力を電波にして地上に送信する計画です。すでに2006年、宇宙で一辺14mの正三角形の網を展開し、ソーラーパネルを搭載予定のロボットを動かしたり、地上への送電実験が成功しています。今回の実験はこれの次のステップといえます。そして日本としては2030年頃には技術を完成させることを目指しています。
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