ヨーロッパの温暖化対策のキーワードはターゲット2℃です。2℃というのは温暖化対策の目標値を表しています。それは地球の気温を産業革命前と比べ、温暖化による上昇を2℃以内にできれば、人類にとって壊滅的な事態にはならないだろうと思われることから決められました。現時点で気温は0.74℃上昇しているので、実質的な猶予はあと1.26℃となります。気温上昇を、この1.26℃以内に抑えるためには増え続ける世界の二酸化炭素排出量を2015年から減少に転じさせ、2050年には半減、先進国は60%〜80%削減する必要があります。これに向け、ヨーロッパでは、国境を越えた連携、環境税や自然エネルギーの利用促進といった政策、自治体や企業の自主的な取り組み、が行われています。中でもスウェーデンなどは環境立国とよばれるまでになっています。技術立国といわれる日本ですが、効果的な政策が実行されないなど、技術を生かしきれずにいます。京都議定書の削減義務達成のために学ぶことは多いはずです。
まず2005年にEU内の大手企業1万2000社に排出枠を設定。国境を越えた排出権取引が行われています。また国境を越えた電力網があります。これが自然エネルギーの有効利用に役立っています。風力など自然エネルギーを利用した発電は発電量が不安定だという欠点があります。しかし離れた地点に設備を複数設置し、どこかで発電量が落ちても他の場所で発電した電力で埋め合わせることができます。このようなことをEU全体でやっていれば、常時安定供給が可能になります。またある地域で余った電力を他国にまわすことで、自然エネルギーを利用し尽すことができます。
EUの国々はやっていることだけでなく目標もすごいです。京都議定書ではEU全体で8%の削減義務を負っていましたが、達成がみえてきたとし、さらなる目標を設定しようとしています。ドイツは2020年までに60%、イギリスは2050年までに60%、フランスは2050年までに80%。中でもイギリスでは正式に立法化されようとしています。スウェーデンにいたっては2020年までに石油消費をゼロにするという目標を立てています。他にEUは2020年までに電力消費を20%削減し、電力の20%を再生可能エネルギーで賄うという目標もあります。ドイツとスウェーデンは原発からの脱却を目指しています。ドイツは2020年までに国内にある原発19基を全て停止させる予定です。ただ現在ドイツはフランスの原発で作られた電力を買っています。これも止めなければ意味がありません。また自然エネルギーなどで埋め合わせられるか不透明です。この二つの問題はスウェーデンにもいえます。
しかしスペインは2013年、風力発電が21.1%と21%だった原発を抜いて電力供給源トップに。全体の実に42%が再生可能エネルギーとなりました。またポルトガルは2013年第1四半期の電力供給に占める再生可能エネルギーの割合が70%と原発どころか火力発電も追いやりつつあります。2013年末の設備容量でみても、中国7万5564kW、アメリカ6万kW、ドイツ3万1332kW、スペイン2万2796kW、というように遥かに面積の広い国に食らいついています。
まずはイギリスの交通規制から。ロンドンでは駐車場などでのアイドリングを交通違反とみなし、5分以上になると罰金を科されます。また2003年2月17日からはロードプライシングが始まりました。これは平日の午前7時から午後6時30分にロンドン中心部の課金区内を走る自動車に一律5ポンドを科す制度(タクシーと緊急車両は対象外で、環境に優しい車もタダになる場合あり)です。料金は前払いし、自動車のナンバーをデータベースに記録させておきます。すると街中にある監視カメラがナンバーを読み取り、データベースと照合します。もし、未払いを発見されるとその日の夜までに支払わなければ、料金が40ポンド増加し、9000円相当になります。導入後は渋滞が30%、交通量自体も15%〜20%減少しました。このロードプライシングはノルウェーでは1986年、シンガポールでは1998年から実施されていますが、世界的な広がりはありません。一応、日本でも東京都が検討していますが、実行されるかは不明です。
ドイツのミュンスターでは市内に自転車専用ロードを整備。自転車専用の信号もあります。またあるドイツの農村では家畜の排泄物からメタンガスを取り出し、発電に利用しています。さらにその排熱で温水を供給しています。また何といってもドイツは太陽光発電王国です。4年で10倍という想像を絶するペースで、設備導入を進めてました。特に2005年には年間60万kW増で、総発電能力を157万kWをとし、一気に日本に代わって世界一となりました。2006年には304万kWとなり、日本の170.8kWを大きく超えました。国別生産量は日本が世界一のままですが、企業別ではドイツのQ-Cellsがシャープを抜いて世界一となりました。ドイツでは太陽光発電による電力を20年間1kWhを約80円〜100円で買い取るように法で定められています。日本での設置が伸びないのはこのような価格保障が無いためです。さらに風力発電設備も2000万kWと世界一で、日本の108万kWを圧倒しています。2007年の増分はアメリカで、524.4万kW、次がスペインの352.2万kW、次が中国の344.9万kW、とヨーロッパ以外でも急増中です。一方、日本は面積がネックになっている面もあるでしょうが、14位の13.9万kWでした。なおドイツでは2020年までに電力の25%を再生可能エネルギーで供給できるようになる見込みです。
次はゴミ回収を約50年前から有料化していた環境立国スウェーデンです。まずスウェーデンでも2007年8月1日からロードプライシングが始まり、ストックホルムで20クローナ(約340円)が徴収されています。豊富な森林を有しているため、木材から抽出したエタノールをバスの燃料として利用しています。ゴミ発電の排熱や地熱も利用しています。さらに生ゴミなどを発酵させて得たガスを燃料とする列車開発しました。ガスで走る列車は満タンで600km走行し、最高時速は130kmと性能も悪くありません。またガスを利用したバスは2005年の時点で779台が運行中です。
日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、ロシア、で実施した博報堂生活総合研究所の調査では温暖化への危機感を持っている人の割合は日本がトップで、88.4%、次がフランスで88.3でした。最下位のロシアでも60%でした。経済発展よりも環境保護を優先すべきという意見も日本がトップで、90.2%でした。しかも2位に10%以上の差がついていました。しかし環境に配慮した生活を快適と感じている割合はアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、が80%以上だったのに対し、日本は57.2%で最下位でした。根底にあるのは自分の生活は犠牲にしたくないという思いです。環境のために便利な生活を犠牲にしたくないと考える人の割合は41.6%で日本がトップでした。(最下位はイタリアで15.7%)。つまり、日本は危機感は高いのにいざ自分で実行するとなるとためらうようです。