風力発電は稼動中に二酸化炭素を排出しないので、温暖化対策として世界中で導入が進んでいます。しかし、風の吹き方次第になるので発電量が不安定、1つの設備が生み出す電力が少ない、地上付近(100m位)にあるため、鳥の衝突や騒音が問題になる、などの欠点があります。これらの欠点を解決し、現行方式より多くの風力エネルギーを電力に変換できるようにしようというのが高高度風力発電です。
高高度風力発電では風車を上空へ上げ、発電します。なので、鳥の衝突や騒音の問題が緩和されます。しかし最大の利点は上空ほど得られる風力エネルギーが多くなり、しかも安定することです。高高度風力発電の最終目標は上空1万mのジェット気流を掴まえることです。地上1mの風力エネルギーは1.7Wですが、最大で時速360kmに達するジェット気流は5kWから10kWのエネルギーを秘めているという推測もあります。
カナダのマゲンパワー社はヘリウム入りの飛行船のような装置を開発しました。ヘリウムで地上122mまで浮かばせ、送電ケーブルで地面につないでおきます。本体はバスくらいの大きさで、側面には帆がいくつも付いています。帆に風を受け、本体が回転することで発電します。発電量は4kWで、価格は1万ドル(ヘリウム代含まず)ほど。
オランダの宇宙飛行士オッケルスと教え子は風車付きの複数の発電装置を数珠つなぎにし、全体を凧のように空中に浮かばせる方法を考案しました。総発電量は最大5万kWになるとみています。これらの方式には発電量が予測以下の場合に設置場所の変更がしやすいという利点があります。現行の風力発電の高さ100mに達するような風車はそう簡単に移動させられません。しかしケーブルで発電装置を高く上げている高高度風力発電の設備は地上に降ろすことで簡単に移動させられます。また修理・点検時にも降ろせば、高いはしごを登っていったり、高所での作業する必要が無く、安全です。
そして究極の高高度風力発電を計画しているのがサンディエゴにあるスカイ・ウインドパワー社です。発電機付きの飛行船型装置を上空1万mのジェット気流中に浮かべます。装置には1対のプロペラが付いていて、逆方向に回転させ、姿勢を安定させます。他にもオーストラリアの工学者であるブライアン・ロバーツ氏と共同でヘリコプターのよな発電機も研究しています。これを飛行機が通過しない高度4600mの空域に浮かばせます。GPS技術で垂直・水平方向に誤差1m以内に制御し、1ヶ月に1回ほど地上に降ろし、保守点検を行います。スカイ・ウインドパワー社によると、発電効率は最大で地上の風車の3倍以上となる90%になるとみています。電力マーケティング協会によると、発電コストは石炭火力発電の半分以下に抑えられるそうです。あとは同じ装置を一箇所に多数浮揚させ、空中発電所とします。