エアロトレインはリニアーモーターカーのように凹型のガイドウェイ内を浮上して進む列車で、2000年に小渕内閣が立案した「ミレニアム・プロジェクト」における近未来計画の1つに採用されています。浮上して進むため、車輪と地面の摩擦が無く、少ないエネルギーで高速走行が可能になります。リニアーモーターカーと違うのはこちらが電磁石で強制的に浮かされるのに対し、エアロトレインは車両に付いた小さな翼とモータープロペラで自ら浮き上がります。飛ぶ原理は飛行機と同じで、風を受けると翼に沿って上下を空気が流れていきます。飛行機の翼は下より上を流れる空気が遠回りしなければならない形状をしています。しかしそれぞれの空気は同時に翼の反対側に着きます。よって上の空気は下の空気より速く流れます。そして空気には速く流れるほど圧力が低く、遅いほど高くなる性質があります。(ベルヌーイの定理)圧力の高い方から低い方へは吸い上げる力が働きます。これが揚力です。自ら揚力という力を生み出して浮上するため、外部から加えるエネルギーを節約するのです。
また地面スレスレを飛ぶエアロトレインには鳥人間コンテストでおなじみの地面効果が働きます。地面スレスレを飛ぶと翼と地面の間に空気の流れが集まり圧力が高くなります。揚力は圧力の差が大きいほど大きくなります。このように揚力が大きくなるのが地面効果です。地面効果は地面に近いほど大きくなりますが、水面では高度が低いと波の影響を受けます。エアロトレインは波の無い地面を使いますので高度を低くとって、鳥人間コンテストより大きな地面効果を受けられます。このように地面効果をフル活用することでエアロトレインは浮き上がるのに必要なエネルギーをさらに節約しています。
まず長所ですが、研究している東北大学大学院教授の小濱泰昭氏によれば、エアロトレインは現在の新幹線や研究中のリニアーモーターカーよりも安いコストで整備できるとされています。また安全性や耐久性にも優れています。しかし最大の利点は消費エネルギーが新幹線の3分の1と少なく、環境に優しいことです。消費エネルギーが少ないため、風力発電(沿線設置という手も)やソーラーパネルで発電した電気で水を電気分解し、水素を製造。走行時に水素を燃料電池に取り込んで発電し、その電力で走行することが出来ます。こうすれば走行時の二酸化炭素の排出は全くのゼロとなります。このようなことは膨大な電力を必要とするリニアーモーターカーではできません。省エネのエアロトレインならではの利点といえるでしょう。 短所はリニアーモーターカーより騒音問題(プロペラの回転音など)が起きやすい、大量輸送の面で新幹線などより不利ということです。
1999年から東国原知事でお馴染みの宮崎県日向市にある鉄道総研所有のリニア実験線「浮上式鉄道宮崎実験センター」の跡地で走行実験が行われています。小型飛行機風の実験機は2対の翼の間に1対のプロペラがついていて、約時速100kmで車輪が浮き上がります。2011年6月22日には2人乗りで最高時速200km、しかも1人を1km運ぶのに使った燃料は新幹線の半分以下。
目標は500km区間を時速500km、325人乗りで12分間隔で往復走行できることで、2020年に定員350人、時速500km走行の有人機体の完成を目指しているようです。さらに将来はスーパーグリッドとの接続や水素社会の一部になる可能性もあります。