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究極の動力炉!!核融合発電

核融合反応とは!?

 核融合反応とは超高温高圧の環境下で原子同士が融合し、別の原子になることです。この反応は膨大なエネルギーを生み、太陽の輝きの源でもあります。もちろん、運転時に二酸化炭素は排出されません。
 通常、原子同士を接近させても 反発し合い、融合しません。しかし超高温高圧にすると原子は超高速で運動して、大きな運動エネルギーを持ちます。その超高速(秒速1000km以上)の原子同士が衝突すれば運動エネルギーが反発力に打ち勝ち、 融合します。4個の水素原子が1つのヘリウム原子になるのです。この際、質量が融合前よりわずかに減り、その減少分が膨大なエネルギーに変換されます。その変換効率は核分裂の7倍に達します。原子力発電所のウラン235の核分裂では質量の0.1%がエネルギーに変換され、ウラン1gから20億カロリーの熱が発生します。しかし水素の核融合では質量の0.7%がエネルギーに変換され、水素1gから140億カロリーの熱が発生します。

核融合の種類

 一口に核融合といっても様々な種類の反応が研究されています。現在、最も早期に実用化されそうなのは、実験炉ITERでも実験されるD-T反応です。といっても、反応を起こすには1立方cm辺り100兆個のプラズマを1億℃以上(自己点火条件)にする必要があります。さらに1億℃以上の熱に耐えられる物質が存在しないので、プラズマが炉の壁面に触れないように磁場で閉じ込める必要があります。太陽中心核では1500万度で核融合が起きていますが、エネルギー生成効率は非常に低く(存在原子のごく一部しか融合しない)、水素1tで1Wです。それでも、中心核のプラズマ密度が1立方cm辺り100兆個の1兆倍と高く、半径が14万kmもあるため、生成されるエネルギーの総量は莫大なものとなります。これに対し、人間が商用利用するにはできる限りコンパクトな設備で大きなエネルギーを生み出せるよう高効率にしなければなりません。またプラズマ密度も太陽より低いので1億℃以上の超高温にしなければならないのです。燃料にはトリチウム(三重水素)という放射性物質と重水素を使用します。重水素は海水中から取り放題ですが、トリチウムは自然界にはごく微量しかありません。なので、既存の原子炉でリチウムに中性子をぶつけて製造する必要があります。あとは核融合炉から出た中性子をリチウムにぶつければトリチウムを得ることができます。つまり核融合炉にエネルギー生成と自身の燃料製造を同時に行わせることができるのです。
 D-D反応は重水素同士を核融合させる反応です。重水素は海水から取り出せるので、燃料には困りません。ただし、自己点火条件がD-T反応の10倍も厳しくなっています。なので、商用利用はできそうにありません。しかし燃料調達が簡単なので、実験施設ではよく使用されています。
 D-3He反応は重水素とヘリウム3を核融合させる反応です。自己点火条件の厳しさはD-T反応の5〜6倍です。上記2種類の反応で生成したエネルギーは中性子という形で出てくるので、これを水に当て蒸気で発電します。また放射線が発生します。それに対し、D-3He反応で生成したエネルギーは高速の荷電粒子である陽子という形で出てきます。この陽子を電磁力で制御し、減速させることで直接電力を取り出すことができます。なので、D-T反応は生成エネルギーの30%以下しか利用できないのに対し、D-3He反応では70%以上利用できます。また放射線は発生しません。副反応のD-D反応で発生しますが、放射性廃棄物の量は現行原発の0.003%です。D-3He反応は高効率低汚染と正に究極の発電方法です。ただし燃料のヘリウム3が超入手困難です。地球上には全く無いと言っても過言ではありません。一応、放射性物質であるトリチウム(半減期12.3年)が崩壊するのを待っていればヘリウム3になります。ただ、これでは世界中で利用できるほど大量には得られないようです。
 しかし、あきらめるのはまだ早い気がしないでもないです。実は天然のヘリウム3が大量に存在する場所があります。それは、なんと月面です。太陽からは太陽風という粒子の流れが噴き出しています。この太陽風には微量のヘリウム3が含まれています。そのヘリウム3が風化のない月面の砂に蓄えられているのです。正確には分かっていませんが、埋蔵量は100万tとも言われています。とはいっても、詳しい分布、採集方法、月からの輸送コスト、など課題が山積しています。

利点と問題点


 核融合炉の利点は原子炉同様、運転中に温室効果ガスを排出しないことです。そしてその原子炉より放射性廃棄物の量が少ないです。原子力発電を行うには発電所だけでなく、各地に点在するウランの濃縮や加工施設で核燃料を扱うことになります。しかし核融合発電では燃料を扱うのは発電所だけであり、事故対策が必要な範囲が限られます。さらに原子炉では核分裂が制御不能になっても質量が臨界点以上なら連鎖反応が起き、放射線が出続けます。連鎖反応が無い核融合では反応条件が崩れると勝手に反応は停止し、致命的な事故にはなりません。厳しい自己点火条件が制御不能状態で満たされるわけが無いからです。
 原子力発電の事故でまず思いつくのは放射線漏れでしょう。核融合炉で使用するトリチウムも放射性物質ですが、あまり心配しなくていいです。トリチウムは非常に軽く、漏れてもすぐ空気中に拡散します。またトリチウムから出るベータ線という放射線はエネルギーが低く、皮膚を貫通できません。よって、吸い込むか口から飲み込むかしないとダメージを受けません。そして非常に軽く、すぐ拡散するトリチウムを体内に取り込むというのは、よほどずさんな作業条件でなければありません。また2000年にロスアラモス研究所では3000立方mの実験室内からトリチウムを除去するという実験が成功しています。さらにトリチウムは化学物質のような食物連鎖による生物濃縮はありません。仮に体内トリチウムが入っても10日で排出されます。その上、マウスをトリチウム水で飼育し、500ミリシーベルト(日本の年間自然放射は1.4ミリシーベルト)の放射線を食らわしても影響はありませんでした。そして最終設計報告書ではITERの事故で放出されるのは50ミリシーベルト以下としています。なので、放射線の脅威は原子炉より遥かに低いです。
 最大の問題点は技術的困難さです。核融合反応を起こすには1億度以上の超高温が必要です。その超高温に耐えられる物質が存在しないので、磁場でプラズマを閉じ込めておかなければなりません。現在はトカマク型という磁場閉じ込め方式が主流となっています。それによる高圧プラズマの保持世界記録は日本の実験装置JT-60が持っていますが、30秒弱に過ぎません。また、高エネルギーの中性子の放射に耐える素材、放射線を帯びた炉壁を交換したりする遠隔操作ロボット、トリチウムなどの核融合用燃料を安全に取り扱う技術、放射線漏れ対策や放射線を浴びた部品の安全な処分法、などが必要です。さらに膨大な建設コストも何とかしなければいけません。このような技術的困難さにより、核融合炉の実用化は2050年以降になるとみられます。燃料を月面で調達しなければならないD-3He反応に至っては22世紀中になりそうです。電力会社が利用するにはただ技術的に可能になるだけでなく、建設・燃料その他運転コストが他の発電方法(火力、原子力、水力など)と対等になる必要があるからです。D-3He反応に至っては燃料を月から輸送しても…

東京電力からもアクセスが。自慢になるか?!

参考(核融合科学研究所)

日本の設備例

 ITERばかりが有名ですが、日本にも実験施設があります。岐阜県土岐市には核融合科学研究所というのがあります。ここでは、2013年に超電動コイルの磁力で浮かせた水素を9400万度まで加熱し、核融合を起こせる状態を世界最長の48分間持続させました。ただ、これでも水素から核融合エネルギーを取り出すには不十分です。現在、さらなる研究に向け、重水素同士を核融合させる実験炉JT60-SAを建設中です。JT60-SAは直径12m、炉の重量2600t、プラズマには550万アンペアの電流が流れ、熱出力は4万kW、建設費は650億円となっています。
 専門機関だけでなく、民間企業でも研究開発が行われています。光産業創成大学院大学、浜松ホトニクス、トヨタ自動車、はレーザー核融合というのを共同研究しています。レーザー核融合は重水素を封入した小さな燃料ペレットに1平方cmあたり1000京ワットというような高エネルギーレーザーを照射し、核融合させます。共同研究では重水素で樹脂をシャボン玉のように膨らませることで、安価な燃料ペレットを作成。これを連続的にレーザー発生器の中に落下させ、核融合を起こしています。ただし、現在では燃料ペレット中の重水素の1%以下しか、反応しません。

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