石炭火力発電は産業革命から今まで使われ続けている発電方式です。中東の石油は枯渇、価格高騰、の危険があります。しかも中東は政情的に不安定です。石炭にはこのような危険があまり無いため、今でも世界中で発電に使われています。日本も半分以上を政情的に安定したオーストラリアから輸入していて、供給が途絶える可能性は低いです。このように安定供給という観点では優秀な石炭ですが、二酸化炭素排出量は化石燃料の中で最悪です。また100万kWの発電所を1年間稼動させるのに必要な燃料の量は原発が濃縮ウラン21t、天然ガス方式の火力発電所が93万t、石油方式が143万t、石炭方式が221万tとなっていて燃費も悪いです。なので、世界では石炭火力は嫌われています。ところが国内で石炭を大量採掘でき、電力不足の危険のある中国は毎週のように石炭火力発電所を新設しています。アメリカは排出量削減のため、自国の二酸化炭素排出量の32%を占める石炭火力発電を減らし、原発の新設を進めています。、が同時に2030年までに14万メガワット分の石炭火力発電所の建設を予定しています。ただ、カンザス州政府が温暖化問題を理由に州内の建設許可を出さないなど、反発が起きていて頓挫しそうです。。それに加え、もう実現は無理でしょうが、アメリカが14万メガワット分の建設を行えば、両国の石炭火力発電所は60年で産業革命から今までに石炭が放出してきたのと同量の二酸化炭素を放出するとまでいわれています。一方、日本も電力会社が、原油高騰のため、電力自由化に対抗するため、安価な石炭火力発電が増加しています。明らかに、これは温暖化対策を進めるヨーロッパなどのの流れに反しています。燃料としての石炭には長所もありますが、短所の方が遥かに大きいとみられているのです。しかしまだ石炭を生かす方法があります。それが石炭ガス化複合火力発電(IGCC)なのです。
この発電方式で使用する石炭は製鉄の燃料にする瀝青炭という種類です。この瀝青炭は粉末状にしておきます。またガス化に使用するガス炉には複数のタイプがあり、それらに合わせた粒子直径にする必要があります。
発電プロセスはまず石炭を水や酸素と共にガス炉でガス化します。すると石炭の化学結合が切れ、炭素、水素、投入量以上の酸素、に分離します。また燃焼前に、このガスから汚染物質を除去しておきます。その後、ガスと水蒸気を反応させると、水素と二酸化炭素が生成されます。水素は先へ送り、二酸化炭素は回収します。通常の燃焼ガスより濃縮されているため、回収しやすくなっています。そしてこの二酸化炭素は、パイプラインで輸送し、地下貯留技術で封印します。こうすれば発電で大気中に排出される二酸化炭素は無いも同然となります。発電所自体も、こうすることを見越して貯留しやすい場所の近くに建設します。次に水素を燃焼させ、その燃焼ガスでガスタービンを回し、発電します。水素は燃やしても二酸化炭素は発生しません。さらに燃焼ガスの熱で水蒸気をつくり、この蒸気でも蒸気タービンを回し、発電します。こうして石炭のエネルギーを徹底利用するため、燃費が改善されるのです。また通常方式より汚染物質や二酸化炭素は濃縮されているため、処理しやすくなっています。このようにして石炭の短所を消せば、安定的に確保できるという石炭の利点だけを享受できます。
また石炭ガスを燃料電池に送り込み、3段階の発電を行う石炭ガス化燃料電池複合発電というのも研究されています。
アメリカではサザンカンパニー社等からなるチームがの建設を進めています。これはブッシュ大統領が進めるクリーン石炭発電イニシアティブによるもので、規模は285MW、商業運転は2010年6月開始予定です。完成すれば世界一のクリーンさ、高効率を併せ持つ石炭火力発電所になるとしています。
日本では1991年に福島県いわき市に電源開発、電力中央研究所などが共同でパイロットプラントを建設。96年まで運転し、成功させました。その後、2001年に6月に株式会社クリーンコールパワー研究所を設立。250MW級の実証機計画を立て、従来方式より13%高い43%の発電効率を目指しています。二酸化炭素排出量は、12%削減されるようです。