二酸化炭素は炭素の酸化物の一種です。現在は飲み物に溶かして炭酸飲料に、固体にしたドライアイスを冷却剤に、など様々な用途で有効利用させています。しかし空気中に放出され続け、濃度が高くなってくると地球環境に悪影響を与えるようになります。二酸化炭素は地表が宇宙へ向け放射した赤外線(熱)の一部を吸収し跳ね返します。それを受けた地表は熱せられ、さらに強い赤外線を放ちます。それをまた二酸化炭素が跳ね返すことで、地表の温度はどんどん上昇していきます。これが温室効果です。
産業革命以降、人類は二酸化炭素など温室効果を発揮する気体を排出し続けているため、温室効果も必要以上の大きさになり、地球の平均気温を上昇させています。この気温上昇が地球温暖化と呼ばれる現象です。
一方、人類が地球の平均気温を上昇させているというのは、仮説でしかないと考える人もいます。確かに空気中の二酸化炭素は増加しているし、熱を吸収する性質もあります。しかし本当に濃度上昇と気温上昇に因果関係があると断定はできないというのです。さらに地球が受ける太陽熱の量が変化しているためだとする意見もあります。といっても、ここ100年の気温上昇は人類の活動抜きには説明できなくなっていて、IPCCは温暖化の原因が人類である確率を66%から99%以上に引き上げています。
最初にいっておきますが、ppm(parts per million)は100万分の1を表す単位で、1万ppm=1%です。また10億分の1を表すppb(parts per billion)という単位もあり、1000万ppb=1万ppm=1%となっています。
二酸化炭素濃度は産業革命時は280ppmと推定されています。これに対し、現在は400ppmとな
っていいて、過去65万年で最高となっています。またこの増加の70%が1950年以降に起きてて、戦後の化石燃料大量消費による経済成長と二酸化炭素濃度の増加は深く関係しているといえます。年間の濃度上昇も経済が成長するのに合わせて加速していて、1950年以降に70ppm増加しているということは年間の平均上昇濃度は1.2ppmです。しかし現在は年間2ppm上昇しているといわれています。
一方、平均気温は20世紀中に0.74℃上昇していて、このうち0.5℃の上昇が1950年以降に起きています。これだけでも、戦後の化石燃料大量消費が大量の二酸化炭素を生み、それが温暖化を加速させていることが分かります。(濃度変化と気温変化の折れ線グラフ)
また 重量で考えると二酸化炭素濃度が1ppm増加すると地球全体では炭素ベースで21億t、二酸化炭素ベースで80億t増加したことになります。なので、現在大気中には炭素ベースで約8000億t、二酸化炭素ベースでは3兆t以上の二酸化炭素が存在していることになります。
ちなみに文明誕生以前は火山活動で温暖化が起きていたと言われています。例えば氷河期中、海が氷で閉ざされているために火山から排出された温室効果ガスが海に溶けることなく、空気中に蓄積されていきます。溜まった温室効果ガスによる温暖化で氷が融解。温室効果ガスは海に吸収され温暖化の進行は停止。といった仕組みで過去に自然に温暖化が起きたり止まったりしていた可能性があります。
他にも恐竜を絶滅させた小惑星衝突で発生した地球全体で700億tの灰が生まれるほどの大火災で発生した温室効果ガスが温暖化を引き起こしていた可能性もあります。
温室効果ガスと呼べる気体は二酸化炭素だけではありません。しかも、二酸化炭素以上の温室効果をもたらす気体も珍しくありません。例えば、天然ガスの主成分であるメタンは二酸化炭素の23倍の温室効果をもたらします。(詳しくは次項で)さらに燃料の燃焼や工業が排出する一酸化二窒素は296倍となっています。
また別の環境問題の対策が、温暖化問題を悪化させていたりもします。エアコンや冷蔵庫の冷媒として使用されていたフロン類のCFC(クロロフルオロカーボン)がオゾン層を破壊することが分かり、オゾン層をほとんど破壊しない代替フロンと呼ばれる物質が開発されました。ところが代替フロン類は超強力な温室効果ガスだったのです。エアコンや冷蔵庫の冷媒として使用されていたHFC(ハイドロフルオロカーボン)と半導体の製造に使用するPFC(パープルオロカーボン)は二酸化炭素の数百から数万倍、電気を通さない絶縁ガスの六フッ化硫黄は2万2000倍の温室効果をもたらします。またHCFCは数千から数万倍をもたらす上、同量のCFCの1%から10%のオゾン層破壊効果をもっています。ただし、現在、フロン類は先進国では規制が進んでいて、モントリオール議定書では2020年までに全廃することになっています。このため、日本の排出量も二酸化炭素が増加する一方で減少しています。(参考)よって、フロン類が問題視されるのは規制が甘く、全廃時期が先進国より20年遅く(HCFCは10年遅く)設定されている発展途上国です。
以上のように温室効果ガスの中でも二酸化炭素の温室効果は小さいほうです。にもかかわらず、温暖化対策=二酸化炭素削減であるかのようになっているのは、他の温室効果ガスより濃度が高く、原因が人間の活動にあり、しかも温暖化を進行させるだけだからです。例えばメタンは強力な温室効果ガスですが、濃度は2004年で1.8ppmです。フロン系も濃度は低いです。実は、水蒸気も強力な温室効果ガスですが、海水の蒸発など発生の大部分は人間の活動とは無関係です。しかも雲を形成し、太陽光を跳ね返して温暖化を進行しにくくしもします。しかし二酸化炭素は温室効果ガスの中でも圧倒的に濃度が高く、温暖化を妨げる作用はありません。一応、海や火山活動などでも二酸化炭素は発生します。しかし海は吸収してもいますし、火山の活動を止めさせるというのは無理です。なので、これらは自然の営みとして無視し、人類が排出する二酸化炭素の削減に集中するしかありません。登山に行っても散らかっている落ち葉(自然が出した二酸化炭素)は無視し、自ら出したゴミ(文明が排出した二酸化炭素)にだけ責任を持てということです。
世界の国別で見ると排出源となっている国はこうなっています。アメリカと中国で約4割を占めていますが、アメリカは京都議定書を批准せず、中国は発展途上国のため削減義務がありません。中でも、京都議定書の次の枠組みでは特に中国が削減の中心にならなければなりません。というのも、人口が世界一のため1人当たりの排出量は日本より遥かに少ない(参考)です。つまり、人口が不変でも中国が経済成長を続け、1人当たりの排出量が日本と同じになるだけで排出量は現在の2.7倍になります。よって、京都議定書の次の枠組みでは中国の排出量削減が非常に重要になってきます。もちろん先進国内でも排出量削減は推し進める必要があります。そうしなければ、中国に対し、助言や批判を行っても説得力に欠けると思われます。しかし日本の排出は増加し続け、もうすでにカナダは目標達成が不可能になりつつあります。さらにアメリカとオーストラリア(2007年末に批准を表明)は京都議定書を批准していません。これらを踏まえた上でこのグラフを見ればいかに先進国にも問題があるかが分かると思います。これから先、排出量が飛躍的に増加するであろう中国やインドに削減を迫るにはまずアメリカや日本などの先進国が京都議定書の目標値をクリアしなければなりません。それでやっと、世界は京都議定書の次の枠組みのスタートラインに立てるのですから。
日本が排出している温室効果ガスはこうなっています。見ての通り、ほぼ全て二酸化炭素です。その排出源はこうなっています。京都議定書の削減目標達成のためには産業部門では製造業なら省エネ技術導入や休憩時間の照明節約といった小技、電力会社ならクリーンな発電方式の導入、運輸部門では燃料電池などの新技術導入を行う必要があります。
もちろん、一般国民は政府や企業の対策を黙って見ていればいいというわけにはいきません。家庭は割合は大きくありませんが、排出量が増加し続けています。なので、一世帯一世帯が温暖化対策を行い、全国民が温暖化抑制を共通の目標にしなければなりません。それが嫌だと言う人は温暖化で荒廃した時代に生まれた子供や孫にどう言い訳するか考えておいてください。